夢に見ていたことが移住して実現。
“無いなら創る”を楽しむ生活へ。

黒川真太郎さん

  
出身地:神奈川県横浜市
移住時期:2012年6月
Iターン

移住をするまで―

私たち夫婦は横浜生まれ横浜育ち。私は自営業で横浜市内の造船所で職人をしていて、全てが順調で問題の無い生活でした。しかし、3.11の震災が起き、街のスーパーやコンビニには商品がなく、子どもに水を1本だけでもと思っても、棚には何も無く物が買えない状況。その時、初めてお金があっても何も買えないという「お金の無力さ」を実感しました。もし、自分達で食べ物を作っていたら子供達だけでも守れるのでは、という思いが出てきて、ものを作り出せる暮らしへの移行を考えるようになりました。
移住先を徳島県に決めたのは、移住相談会で対応してくれた徳島県の担当職員の的確な説明が印象的だったから。移住先選びにはその土地の最初に出会った人の印象も大切だと感じました。

新しく始めた農業

移住後の生活は仮住まいのアパート。仕事は前職の技術を買われ支援隊が紹介してくれた鉄工所でした。しかし、横浜にいる頃と同じような仕事をする毎日に「作り出す暮らしをしたくてここに来たんじゃないのか?」と自問自答するようになりました。そんな想いを支援隊の方に相談すると「できるところからやってみるといいよ」と耕作放棄地を貸してくださいました。農業の基礎知識はありませんでしたが、やる気だけはあった自分に、タイミングよく「有機農業サポートセンター」の研修生募集が目に留まりました。しかし、仕事を辞めての研修は6か月無収入の生活になるということ。心配もありましたが、今ここでやらないときっと今後も挑戦できないと思い思い切って応募することにしました。
研修は6か月で無事終了。夫婦二人で農業、食品加工・販売、配送を行う事業をスタートさせました。
地元野菜のセットや新野町のお米は新鮮でおいしいと好評で、お米のリピートも9割以上。徳島県の食材が美味しいことを他者目線から実感できて、事業を続けていける手ごたえを感じることができましたし、新しく仕事を創りながらでも子育てすることができると感じました。

ひと手間加えて付加価値を

この土地に豊富にある食材にひと手間加えて付加価値の生まれる食品加工にも興味があり、お米を使ったパンやケーキ作りも行っています。お米を使用したパンは腹持ちがよく、もちもちとした食感が美味しいと評判になり、食パンは毎回完売となるほどの人気商品。お米以外にも地元産の野菜や卵、ハチミツを積極的に使用することで、地元の美味しい食材を紹介しています。
2017年に念願の空き家を借りることができ、それまで作業場の一角で販売していたお店も移転リニューアルオープン。出来るだけ自分達で内装を作り、山小屋風のアットホームなお店が出来ました。

「ヨソ者」目線から

新野町に移住して、仕事以外でも新しい企画が動き始めたことがあります。休校中の小学校で都会の子供たちが合宿をして、川で遊んだりバーベキューをしたりと自然の中で田舎の良さを体験してもらうものです。
初回は声をかけた人たちに協力してもらい、次の時には、地域の協力者も増えました。休校中の学校が地域の資源だと伝わり、地元の人達の理解が深まったようです。
私たちのような「ヨソ者」は、今までずっと地域に暮らしている人たちの思いに「ぽっ」と火を灯すことができる役なんじゃないかと思っています。そうやって、暮らしている皆が地域の良さに気付いて活かせるようになったらいいなと思います。

ふりかえって

徳島に来るまでは、農業をしたいと思いつつ、主な収入を得るためにはどこかの会社に勤めなければと思っていました。それが、移住した土地には新鮮な食材が豊富にあり、作り出せる土地も豊富にありました。全国には、この町で当たり前と思われている食材を求めている家庭がたくさんあり、その生産地と消費者のパイプになることが新たな仕事となりました。食材が余ったり、規格外の食材を加工することによって新たな商品が生まれることにも可能性を大きく感じています。
「田舎には何もない」と言われますが、表面に出ていないだけで可能性はいくらでも眠っています。「ないなら創ってみる」。そんな気持ちで行動を起こすことができる、可能性を掘り起こして組み合わせて広げられる場所です。
これからも自然豊かな土地で「無いなら創る」を家族4人で楽しみ、農業を軸とした生活の可能性を広げていきます。